今回、東京大学物性研究所の研究グループ、産業技術総合研究所、福岡大学、上智大学、青山学院大学が協力した実験で、未来の磁気メモリー材料の開発につながる発見があったようです。

この研究が進むと、将来のコンピューターの姿がちょっと変わりそうですよ。

より多くのデータをより省スペースに 求められるデータ密度を高める技術

コンピューターを作る世界では、「半導体の集積密度は18~24ヶ月で倍増する」という「ムーアの法則」というものがあります。

Intel社の創始者の一人であるGordon Moore博士が提唱したものですが、これが物理的に限界にきているんですね。

コンピューターメモリーの密度を高める高密度化は、微細加工技術の発展で支えられてきたからです。

この打開策として、「物質そのものが原子レベルでメモリー機能を持ったらいいじゃん!」という考え方があって、その開発が期待されていることから、今回の研究成果が生まれたというわけです。

原子レベルでメモリー機能を発揮してくれる物質として、磁性と強誘電性が共存する「マルチフェロイック」と呼ばれる物質があります。

これまでの研究でもいろいろなものが見つかっているようですが、その特性を発揮するのは-200度以下という条件があったりして扱いにくいものが多かったようです。

一方、今回の研究で使われた「ビスマスフェライト」は、室温で磁性と強誘電性が共存可能なので、これまでも注目を集めていました。

今回の実験で行われたこととわかったこと

瞬間的に大きな磁場を発生することができる「パルスマグネット」を使って、磁性と電気分極との結合について精密な測定が行われました。

この結果、これまで知られていなかったビスマスフェライトの新たな方向の電気分極を発見。その電気分極も磁場によって制御できることが示されたそうです。

難しいことは管理人もわからないので、今回の実験でわかったことをざっくりとまとめてみると…。

動作環境が扱いやすい

・効果は室温で発揮してくれるので、これまでの物質に比べて扱いが容易である

実用化するためには、やっぱりこれが大きいみたいですね。今回の実験では27度までは観測されているのだとか。

ビスマスフェライトのマルチフェロイック状態は300度以上まで続くことが知られているそうです。

・特定の状態を保持するのに、エネルギーを必要としない(不揮発性メモリー効果)

一度磁場を加えると、元と異なる状態に変化するのですが、その磁場を取り除いた後でも変化後の状態を保ち続けてくれる特徴があります。

メモリーとして記録するのに消費電力が少ないというわけですね。

それから、ビスマスフェライトの電気分極は、最強の永久磁石による磁場(1テスラ)程度ではほとんど変化しないという特徴もあります。

これまでの磁気メモリーは磁石を近づけると情報が消えてしまいますが、ビスマスフェライトだと日常生活の磁場範囲なら安定して使うことができそうというのも大きいようです。

これまでの「0」と「1」の処理にもう1つ加えられるかも

ビスマスフェライトは電気分極の方向が3つあるので、それぞれの状態を使うと3値のメモリーに増えることになるのだとか。

これまでパソコンの処理は「0」と「1」の「2値メモリー」だったわけですが、3値メモリーとなるわけで、より高密度の情報記録に応用できる可能性があるみたいです。

作るのが簡単だから量産化できそう

物理的に限界がきていると言われるメモリーの高密度化ですが、物質自身にメモリーとしての機能を持たせるので特殊な構造を作る必要がなく、これはとても大きなメリットになるわけですね。

しかもビスマスフェライトは比較的単純な構造で、使用元素の種類も少ないので、将来的に量産化する際にも有利となるようです。

今後は、実用化するために電場による状態を制御する必要があるみたいですが、これまでわかっているビスフェライトの報告から見ても、電場の制御は十分可能なんだとか。

これから進められるという実証の研究結果が楽しみです。