最初は「両国でお昼にしようか」なんて話をしてたんですけど、「まぁ、さきに劇場を見ておこう」ということになりました。何せ初めての場所ですから慎重に。それに目的地は劇場です。その周辺にごはん屋さんくらい何件かはあるはずです。
ってことで歩き始めたんですが、歩いても歩いても劇場らしきものは見当たりません。さらには街の雰囲気も、なんだかちょっと違うような…。
私「住所、合ってんの?」
友「間違いないよ~、ちゃんと調べたもん」
でもね、でもね、向こうの通りにフォークリフトが止まってるんですけど(汗)
…………………。
見ないふりして、さらに歩きます。
歩きましょう。頑張りましょう。
ベニサン・ピットを目指しましょう。
歩いていると、友達がこんなことを言いだしました。
「近江谷さんってさ、公演中、周辺で食べたおいしいもの情報を日記に載せることが多いんだけど、今回、それがないねん」
…それって、劇場周辺におすすめのお店がないってことですか?
なんだか不吉なものが頭をよぎります。いやいや、大丈夫。劇場ですよ? ご飯屋さんがないなんてありません。たまたまです。きっと平気。気にしない。
歩きましょう。頑張りましょう。
ベニサン・ピットを目指しましょう。
そうこうするうちに、やっと見つけました~~~!!!! ベニサン・ピットの看板です!
でも、看板は発見したものの、今度は入り口が見当たりません。ベニサンスタジオっていう入り口はあるみたいなんですけど…。
ここはほんとにベニサン・ピットなんでしょうか? ほんとにお芝居をするんでしょうか? 見渡しても、まるで人影がないんですよね。とりあえず、ごはん屋さんを探してさらに歩きます。お向かいにお蕎麦屋さんがあるのですが、もっといい所を探して、歩くことしばし。
ごはん屋さん、結局、見つかりませんでした…(ぼう然)
ぐる~~~~~~っと周辺を歩いたんですけど、ないんです。あとから地図を確認したところ、千歳公園のある通りを南下、新大橋通りに出て西へ進み、1つ目の信号を北へ曲がり、隅田川と平行に走る道をまっすぐ北上しています。知らない土地を大冒険です。
でも、ごはん屋さんが、ないんです。
おそば屋さんとか、もんじゃ屋さんとか、トンカツ屋さんとか、ぽつんぽつんと目に付くんですけど、いまいちの雰囲気だったり閉まっていたり。「うどんだけは嫌。東京のはまずいんだもん」なんていうワガママな意見があったりで、とうとう元の所へ帰ってきてしまいました。
が、そのときです。さきほど見つけたベニサンスタジオの看板の下、壁にはりついた小さな小さな看板があるのを発見! ちゃんと「劇場入口」って書いてあります。
ちっちゃっっ!!!!
上ばっかり見てたので気がつきませんでした…(汗)
でも、その下にあるホワイトボードにはちゃんと「THE・ガジラ」って書いてありますよ。よかった…。ほんとに今日、ここでお芝居をするんですね。
でもね、「ベニサン・ピット」って書いてあるその隣、よ~く見ると矢印が書いてあるんですよ。
つきあたりを右へ
(下折れ矢印マーク)
しかも、その「つきあたり」までの矢印部分が異様に長かったり(汗)
この長さ、何か意味するところがあるんでしょうか。
何はともあれ腹ごしらえです。けっきょく三国屋さんでいただくことにしました。道を挟んでお向かいにある、おそば屋さんです。あんなに歩いたのに…(涙)
でもきっと、おそばなら東京でもましでしょう(←東京のが本場です)
昼食、三国屋さんにて。
三国屋さんでは二人でざるそばを注文しました。そして、まず出てきたのがこれ。小さな器にご飯が入っています。「のりたま」みたいなふりかけがかかってました。重ねられた小皿にはキャベツに塩をしたものが盛ってあります。これはこれでおいしかったんですけど…。
私の素朴な疑問:これは、つきだし? ざるそばに、つきだし?(それもご飯)
友達の素朴な疑問:このご飯、丼を注文したときにもついてくるの?(それじゃ、ご飯にご飯)
東京では、もしかしてこういうのが主流なんでしょうか。でも、お店の人に聞く勇気はありませんでした。なんというか、軽いカルチャーショック。
でも、おそばはおいしかったです。さすが東京。ツルツルのシコシコ。具もネギやらゴマやらいろいろついてました。
そうそう。このお店、劇場の前にあるせいか、メニューにはこんな一文が書いてありました。
「10時迄はお湯を落とさずにお待ちしています」
なんだか、いい感じ。ちょっと気に入ってしまいました♪
営業時間は午前11:30~午後2:00、午後5:30~午後10:00。
定休日は日曜・祝日だそうです。(メニューから)
腹ごしらえもできたので、いざベニサン・ピットです。恐る恐る矢印のとおりに細い路地みたいなとこを歩いていくと…普通に道路に出てしまいました。敷地内とかに出るんじゃないのか(汗)つまり、今までいたとこは建物の裏側だったんですね。表は建物の反対側にあったようです。図で書くとこんな感じ。
矢印が最初に見つけた看板のあったとこ。丸印が壁にはりついた看板のあったとこです。
入り口に回るとちゃんとポスターもはってあって、すでに何人か開場を待ってる人がいました。
でも、あとから考えると、いきなりこっちにたどり着かなくて正解だったかもしれません。表側は本当に何もないんです(涙)
一応、2階には居酒屋らしきものが見えるんだけど、2階へ上がっていく階段は通せんぼされてて今の時間は閉まってるようでした。そして、建物のたたずまいが、まさに倉庫。
調べてみると、「紅三」って明治8年創業の染物会社なんだそうですね。ベニサン・ピットは、この会社の施設(ボイラー室を含むらしい)を劇場にしちゃったんだとか。なるほど、雰囲気があるわけです。お芝居の設定上のせいかとても薄暗いので、野戦病院をほうふつとさせます(行ったことないけど)
お芝居のほうはというと、「国粋主義者のための戦争寓話」という題名のとおり、重くて、暗くて、…観ているとなんだか自分の中の信じてるものとか、自分の基準みたいなものがぼんやりとあいまいになってくるようで、ちょっと気持ち悪くなっちゃいました。そのせいかもしれません。最近、コラムで読んだこんな一節を思い出していました。
「見たから信じるというのではなく、見ないでも信じられるものになりなさい。見ないで信じられるものこそ幸いです」
「私はあなたが十字架にかけられたときにできた手の穴に自分の指を突っ込むまであなたをイエスだと信じません」そう言ってイエスの復活を最後まで信じなかったトマスに、イエスが言ったことばだそうです。
観たのは昼の部だったので、劇場から出ると外がまだ明るいんですけど、これがかなりホッとしました。夜の部だったりしたら、そのまま夜中もうなされそうです。ああ、よかった。それにしても、こんなお芝居もあるんですね~ (^_^;
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コメント
こんにちは。
ベニサンピットの話、楽しく読ませてもらいました。
そのベニサンピットなんですけど、
1月25日に閉館してしまいました。
演劇ファンの間では人気のあった劇場
だったですけどね。
>kenkenさん
こんにちは、はじめまして! コメントありがとうございます。
ベニサン・ピットに行ったのはこの記事を書いたときが初めてだったんですけど、これが最後になっちゃったんですね…。できればもう一度行ってみたかったです。ボイラー室を改造していただけあって、独特の雰囲気がありましたもんね。
ベニサン・ピットは老朽化もあったようですけど、今は経済的なことで閉鎖される所が出てきてるから、本当にさみしいですよね。