木の幹に耳を当てると、おきしょうさまの通る音が聞こえるんだよ──
表記するとしたら、「お木精さま」でしょうか。どんな文字を書くのかは今となっては正確にはわかりませんが、昔々祖母に聞いた話です。
最近では聴診器を木の幹に当てると「木の鼓動が聞こえる」なんてことを言いますが、そんな話を聞くずっと前のことでした。木は動いたりしないし、しゃべったりしない、だからそんな音なんてするわけがないと言う私に、祖母は「こんな騒々しい所じゃ聞こえないよ」と笑っておりました。
当時わが家があったのは幹線道路沿い。山から来た祖母にとっては騒々しくてあんまり好きじゃなかったのかもしれません。でも、私にとっては生まれてからずっといる場所なのでそれが普通。そのときは山のほうがよっぽど騒々しいと思っていました。
だって、山ってけっこういろんな音に満ちています。鳥の声、セミの声、カエルの鳴き声、大きな木々が波のようにザワザワいう音。その頃は耳慣れないものすべて騒音のように感じていた気がします。
写真は、街路樹から出てきた小さな新芽。この間、歩いててひょいと見つけました。
耳を当てたら、おきしょうさまの通る音が聞こえるでしょうか。