無限列車編が描かれる「鬼滅の刃」の7巻は、カバー折り返しの部分に特徴のある植物が描かれています。
This seems to be an important hint regarding Enmu.
魘夢に関する重要なヒントになっているようです。
(この記事は、「鬼滅の刃」7巻、8巻、9巻、ファンブック第一弾のネタバレを含みます)
ミミズクを神使とする射楯兵主神社やその周辺のスポットは、「鬼滅の刃」の無限列車編にイメージが重なる場所があるようです。
別記事では煉獄さん、猗窩座、善逸、伊之助、胡蝶しのぶ、炭治郎、玄弥に関して考察してみましたが、この記事では魘夢とイメージが重なる場所を見ていこうと思います。
鍵は、7巻・カバー折り返しに描かれていた植物
上左図のように、7巻のカバー折り返しには植物の葉が描かれています。
一見、笹の葉にも見えますが、9巻に描かれている笹の葉(上右図)と比べてみると、描かれ方が少し違うことがわかります。
9巻の笹は、節から茎が伸びて葉っぱがついていますよね。それに対して8巻の植物は、節の所で複数の葉が扇のように広がって、そこから次の茎が伸びているように見えます。
こうした特徴から、これはキョウチクトウの葉が描かれていると言えそうです。キョウチクトウの葉は輪生葉序(りんせいようじょ)といって、一つの節から複数の葉を出すのが特徴なのです。
下右図は7巻カバー折り返しの葉と実際のキョウチクトウの葉を並べてみました。
キョウチクトウはインドからペルシャ地方を原産とする植物で、漢名の「夾竹桃」は葉が竹の葉のように細長く、桃の花に似た花をつけるところから名付けられています。
「夾」は2つのものを合わせるという意味があり、鬼と汽車が融合した魘夢にぴったりですよね。
キョウチクトウの花言葉には「注意」、「危険」、「油断禁物」といった言葉が並びます。
一時は炎柱をも術に落とし、「だけど俺は油断しないから、回りくどくても確実に殺すよ、鬼狩りはね」(7巻 第59話)と言っていたのに、最後は「ああ、やり直したい、やり直したい」(8巻 第62話)と嘆いていた魘夢に、これもまたぴったりです。
参考 キョウチクトウ(夾竹桃) | 高橋京子 花の絵美術館
参考 キョウチクトウの花☆ | 花咲く祈りの寺☆清瀧寺
魘夢に重なるウサギのイメージからわかること
キョウチクトウは葉、枝、花など、ほとんどすべての部分に強い毒があり、仏教典籍などでは「カラビラジュ(歌羅毘羅樹、迦羅毘羅樹)」と呼ばれていて、インドでは罪人の印にこの花で作った花輪を頭に巻いたといいます。中国では邪気を払う植物として寺院などに植えられていました。意外と仏教と関係のある植物なんですね。
参考 キョウチクトウ♪ | 花咲く祈りの寺☆清瀧寺
参考 広島県緑化センターメールマガジン VOL.303(H27.9.3)
参考 夾竹桃の花が咲いている。 | Webのるて
そんなふうに考えると、魘夢の行動には仏教説話の一つ、「月の兎」に重なるイメージがあります。
この物語は「大唐西域記」(7世紀)や「ジャータカ」(1世紀)に出てくる話で、狐、猿、兎が一人の老夫に食を請われ、布施をしようと決めるのですが、ウサギは何も見つけることができず、自分の身を火に投じてその肉を老夫に捧げるのです。
ジャータカの場合、登場する動物はカワウソ、山犬、サル、ウサギで、食を請うのはバラモン(僧侶)ですが、話は大体同じです。
老夫もバラモンも獣たちの心を試そうと帝釈天が姿を変えて現れたもので、ウサギの行いが忘れられないようにと月の中にウサギを残したため、月の表面に浮かぶ影にウサギの姿が見えるようになったといいます。また、ウサギは釈迦が王子として生まれる前の前世の姿だと伝えられています。
この話は「今昔物語集」(1130~40年ごろ)第5巻第13話「三獣行菩薩道兎焼身語」(三の獣<みつのけもの>が菩薩道を行じ、ウサギが身を焼く話)にも収録されています。
ファンブック第一弾では魘夢について、「鬼舞辻を崇拝しており、他の下弦の鬼たちが次々と制裁されていく中で、最後に自らの命を差し出したほどだ」(一一〇)と解説されています。
魘夢は帝釈天に自らの身を差し出したウサギと姿が重なりそうですね。
興味深いのは、姫路にも仏教に深く関わる施設があるところです。
姫路城の西北にある公園墓地「名古山霊苑」には、昭和29年(1945年)にインドの故ネール首相から姫路市に仏舎利が贈られたことを機に建設された仏舎利塔があるのです。
仏舎利というのは、釈迦の遺骨のこと。
魘夢と釈迦は関係がある。そう考えると、仏教には夢に関わる動物がいることに気づかされます。獏です。
魘夢の見せる夢は獏の夢
ツートンカラーのマレーバクは、仏教国タイではお釈迦様の乗り物だと言われていて、白い部分はお釈迦様の袈裟が掛けられていたからとも、お釈迦様が腰掛けていたからだとも言われているようです。
日本の神社や寺院には「木鼻(きばな)」といって、柱より突き出た部分に彫刻を施した構造物があるのですが、そのモチーフには獏もあって、「獏鼻」(ばくばな)と呼ばれています。
神社仏閣のデザインに獏がモチーフになっているのはちょっと不思議な気もしますが、獏は鉄や銅を食べるとされているため、平和な時代にしか姿を現さない霊獣という考え方があるようです。
白居易(772~846年)は「獏屏賛序」で獏のことを「南方の谷に生じ、象の鼻、犀の目、牛の尾、虎の足を持ち、その皮に寝れば瘟(えやみ、流行り病)を避け、その姿を描けば邪を避ける」「山海經によると、この獣は鉄と銅を食べ、他のものは食べないという」と記していて、獏の姿を描いた屏風にこんな賛辞を呈しています。
遥かなるかなその獣、南国において生まれ、その名を獏という。上古にあっては人心も忠義を持って節操を守り、征伐の号令も天子自から出され、剣や戟(ほこ)が用いられることは少なく、銅や鉄が溢れていたため、獏はこれを一日中食べることができた。
夏殷周の三代以降は、さまざまな王と法律があり、鉄を溶かして武器となし、銅を型に仏となす。仏像は日に日に増え、武器として用いる刃も日に日に増え、どこに削られずにすむ山があり、壊されずにすむ谷があっただろうか。銅も鉄もわずかに残るものもない。
悲しきかな、かの獏は。お前は飢えるしかない。ああ、獏の悲しみにあらず、これは時勢の悲しみである。
「その皮に寝れば瘟(えやみ)を避け、その姿を描けば邪を避ける」と言われていたからか、日本に渡ってきた獏は「銅や鉄を食べる不思議な生き物」から「人の悪夢を食べてくれる生き物」だと言われるようになります。
江戸時代になると一年の吉凶を占う初夢でいい夢を見るため、枕の下に宝船の絵を入れるまじないが流行るのですが、もしも悪夢を見たときは獏に食べてもらうために、宝船の帆に「獏」の字を入れたものもありました。
鋼でできた汽車と一体化し、幸福な夢を見せてやることを餌に人を操っていた魘夢に、獏はぴったりのイメージですよね。
そして無限列車編に登場する他のキャラクターと同じように魘夢も姫路とつながっていて、そのキーワードは「釈迦」になるようです。
参考 獏 ~バク~ | sentoku.net
参考 初夢と宝船絵と獏(バク) | 神使像めぐり
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